中国の旅行法が施行され、3ヶ月が経ちました。政府は初日から取締りを強化し、当初から多くの報道がありました。現地でガイドする側にとっても影響が大きかったようです。そこで、昆明の旅行会社勤務の宋さんに話を聞いてみました。
今回の旅行法は、主に中国人旅行者に向けた政策です。日本人を含む外国人旅行者にはほとんど影響はありません。旅行法実施以来、団体旅行の数は目に見えて減りました。そのため旅行会社の営業収入も右肩下がりです。旅行会社によっては旅行法施行後に会社を畳んだという話も聞いています。しかし、個人旅行やオプションツアーへの参加者は増えました。
━━━施行されて良くなったことはどんなことですか?
旅行者と旅行会社、旅行業者の権利と義務が規範化されたことです。旅行業界が良い方向に発展し、国内で報道されていたような、旅行者に買い物を迫ったり追加料金を請求したりといった悪質な事件が大幅に減りました。これはいいことだと思います。旅行者も価格だけでなく各旅行会社の商品を理性的に、慎重に選ぶようになりました。
━━━施行されて悪くなったことはどんなことですか?
一番大きな影響を受けたのはガイドです。旅行者の買い物が減り、これまで受けていたバックマージンが無くなったため、収入に直接影響を受けています。これまでのところ、ガイドの報酬について、チップや補助の規定は法律にありません。政府は各地方の収入レベルに合わせてガイドの収入と基本的な社会福利制度を早急に整備し、悪いガイドの洗い出しを行うべきだと思います。そして、ガイドと旅行者、旅行会社の利益関係につり合いがとれるようにすべきです。
━━━今後の課題はなんですか?
私は旅行業従事者でもあり、いち消費者でもあります。旅行法によって旅行者の利益を法律で守ることができます。同時に旅行会社の営業行為も規範化されました。これは非常に良いことです。しかし旅行業はヒトに対するサービス業ですから、旅行者によって旅行の目的も異なります。たとえば海外旅行に行く旅行者の中には、ショッピングが目的の人もいます。中国人は自分の友達や家族にお土産を持ち帰る習慣がありますから、ツアーの中から買い物を完全に禁止するというのは合理的ではありません。管理すべきは、商品の質に対する法外な価格の設定や行動です。また管理部門は、いかに旅行会社を法律に遵守させるか、法律違反を罰しこの業界を長期的に良い方向へ発展させていくにはどうすればよいかを考えることが非常に重要です。電子商取引の急速な発展により、今後はインターネットによる予約も増えるでしょう。ネット上の口コミによって旅行会社は評判を得ることができます。これも旅行業界発展の一つの傾向だと思います。また、これからはカスタマイズできるサービスもますます増え、いかにカスタマイズ商品を備えるかが旅行会社の今後の大きな課題です。微信(英語名We Chat:中国版SNS)を使ったマーケティングも一つの大きな趨勢です。私も今微信を使ったマーケティングを研究中です。
雲南海外国際旅行社有限公司 宋東昇さん (昆明市郊外にある東川区にて) |
旅行法は整備されましたが、中国での旅行業界はまだまだ発展段階。広い中国、日本人も行ってみたいというところはたくさんあると思いますが、一番の不安は悪質な旅行業者。騙されずに、安心して訪れることができる国になって欲しいですね。